クチボッカの夜

エピファニア(※1)の前夜、サン・ミケーレ・アルカンジェロのベネディクト会修道院とモンテスカリオーゾの歴史地区の路地が、他に類を見ない祭事の舞台となります。それが、”クチボッカの夜”と呼ばれる伝統儀式です。(イタリアで発刊されているミッキーマウスを主人公とした漫画週刊誌『トポリーノ』第3503号にも登場しています。)

オレンジの皮で作られた眼鏡に、濃く白いひげ、そしてしばしば製油所で使用される円盤状の麻から作られた大きな麦わら帽子を頭に深く被り、誰なのか認識できない格好で村を徘徊する人々は、 “l cos’ vucc (Cucibocca(クチボッカ))”と呼ばれています。

身を包んでいるのも古びた暗い色のコートかマントで、壊れた鎖を引き摺っているかのようにして歩くのです。
この奇妙な装いをした人々は、手に籠とランプ、そして、長い杖を持っています。この杖は、実はなんと”針”で、子供たちの口を縫うのだそう。「口を縫うぞ」と小さな子供たちを脅し、(それがクチボッカ(Cuci(=イタリア語で「縫う」という動詞の語形変化)+Bocca(=イタリア語で「口」))という名前の由来です)子供たちを怖がらせて広場から追い払い、ベファーナ(※2)がやって来やすいようにするのです。そうすれば、ベファーナはより多くの贈り物やごちそうを子供たちに残していってくれることでしょうから。
※1…1月6日;クリスマス・シーズンを締め括るイタリアの祝日。「公現祭」
※2…イタリアに伝わる魔女の一種。公現祭の前日までの一年間に良い子だった子供には素敵なプレゼント、悪い子だった子供には靴下に炭を入れていくと言われています。

  • 2023年1月5日 - 「クチボッカの夜」